同級生
相田めぐみが柴崎にフェラチオしているのをはじめて見たのは、いつのことだったろう
か。
今日の進路指導室には、鍵がかけられていた。
肩をすくめ、入り口のドアにもたれかかって座る。
片耳をドアに押し付け、漏れ聞こえる音に神経を集中させる。
チャックを下ろして萎えたものを取り出し、あやしながら、ドアの向こうの光景を頭に
思い浮かべる。
何度も見た場面。
毛むくじゃらの股間にひざまずき、後ろ手に手錠をかけられ、制服を着たままシャツの
前をはだけている相田。
「……何度言ったらわかるんだよ、舌が止まってるぞ」
柴崎が、数学の授業をしているときと同じ調子で叱咤している。どうやら相田は、そん
なに物覚えのいい生徒ではないらしい。
みごとに禿げ上がった柴崎の頭は何か塗っているのかテラテラと光り、亀頭のようだと
いつも思う。
「んっ……んく、ううん……」
鼻にかかったような、相田の声。
相田と隣の席になってから一ヶ月は経ったけれど、言葉を交わしたのは二、三度ではな
いだろうか。
相田はいつも、泣いているような困っているような顔をして黙って座っている。
無駄口を叩かない女は好きだ。
相田は女の口の用途を、ちゃんとわかっている。
特にかわいいわけでも、かわいくないわけでもない地味な顔だち。
長くも短くもない髪。
高くも低くもない背。
いつも半開きにしている口をいっぱいに開いて、やはり泣いているような顔をして、柴
崎を頬張っていることだろう。
鼻で荒い呼吸を繰り返し、上目遣いで柴崎を見つめながら。
――がんばれよ。
心の中で無責任な激励をしながら、自分の手を相田の口だと思うことにする。
「たまに舌先で裏筋を舐め上げるようにして……そうだ」
柴崎の指示にあわせて、俺は中指でゆっくりと裏筋をなぞる。
いいぞ、相田。そのままエラのまわりをくすぐるように。
熱い息が股間にまとわりついてくるのを感じる。
「ぐっ……よ、よし、また咥えろっ」
今日の柴崎は、切羽詰まってくるのが早い。
俺は少し慌てて、手の動きを速める。
「はい……んむぅ、ん、んん……」
きっちりとまとめてあった髪が生き物のように乱れ踊って、汗ばんだ額に貼り付く。
窓の外には夕焼けが広がっていて、相田の紅潮した頬をさらに紅く染めていることだろ
う。
「ぐっ、んぐ、んんっ」
相田の甘ったるい声が、苦しそうな短い呻きに変わった。
柴崎が相田の頭を掴んで、ズンズン腰を叩きつけている情景が目の裏に浮かぶ。
目を閉じるな、相田。苦しいだろうがそのまま自分を蹂躙している男をしっかり見てい
ろ。
突かれるたびに口の端から唾液があふれ、相田のはだけた胸を濡らしていく。
「……くうっ」
柴崎が低く呻く。
「くっ……ぐふっ、うぐうっ」
むせかけている相田の、くぐもった悲鳴。
呼吸ができない苦しさに身悶えしながら、必死で注ぎ込まれた白濁を嚥下していく。
救いを求めるように、後ろ手に縛られた両手の指をいっぱいに伸ばす。
全てを吐き出した柴崎の無骨な手から力が抜け、萎えた肉棒がズルッと口腔から引き抜
かれる。
ホッとしたのかうっすらと微笑んだ相田の口元から、白い液体がつーっと糸を引いて垂
れ落ち、濃紺の制服を汚していった。
ゆっくりと目を開き、俺は軽く頭を振ってまぶたの裏の映像を振り払う。
汚れた手の平を進路指導室のドアで拭い、開放感とけだるい痺れを帯びた腰をあげる。
ズボンの埃をパンパンと叩き落し、傍らにおいておいたカバンを持って、何事もなかっ
たように帰路につく。
明日は、鍵を開けておいてくれるだろうか。