涼 子  【9】
 結婚してまだ一週間足らずとはいえ、人妻である涼子がまだ処女のままだったとは。

 これには、さすがの澤田も言葉を失ってしまった。
 ――なっ……亭主は、不能か!? こんな女を毎日目の前にして、よくもまあ……
 考えてみると、確かに藤崎夫妻が越してきてから撮り貯めた盗撮写真の中に、セックス
している写真はない。
 しかし澤田だって、一週間毎日毎日24時間夫婦の寝室を見張っていたわけでもない。
「修司さんは……修司さんは、わたしのことを大切にしたいからって……わたしには、ま
だ早いって言って……」
 時々しゃくりあげながら、涼子は話し続ける。
 ――処女のままの女房にオナニーさせて、それをおかずにセンズリかいていやがったと
はなぁ……
 相槌を打つのも忘れて、澤田は痴呆のようにポカンと口を開けている。
「わたしが、もう少し大人になるまで、我慢するからって……だから、せめて、少しでも
修司さんを楽にしてあげたいと思って、わたし……」
 夫以外の男との交際経験がない涼子は、藤崎の言葉を少しも疑わずにただ自分が愛され
ているからまだ処女を奪わないのだと思っていたらしい。
 そして、言われるがままに藤崎好みの性技を覚えていったのだろう。
 藤崎が涼子を愛しているのは、おそらく間違いない。
 だが、自分好みの口技を仕込み、目の前で自慰にふけるような女にまでして処女を奪わ
ないというのは、たんなる歪んだ性癖がさせたことだろうと澤田は思う。
 ――ある意味、俺より変態だな。
 毎晩毎晩、汚れを知らない秘苑を凝視して鼻息を荒くしている藤崎の姿を思い浮かべ、
澤田は思わず苦笑いする。
「わたし、あの人と結ばれる日を夢見て、ずっと……だから、あなたなんかとは、絶対に
できません」
 話しているうちに、麻痺しかけていた涼子の理性が少しづつよみがえってきて、だんだ
んと口調がはっきりしてくる。
「……どうぞ、おかえりください。写真のことでしたら、主人が帰宅したら、相談してみ
ることにしますから」
 膝の上に置いた手でスカートをぎゅっと握りしめ、涙に濡れた瞳で、キッと澤田を見る。
 ――そうよ……はじめから、そうすればよかったのよ。
 今更ながら、澤田の舌でイカされてしまったことに後悔の念が湧いてくる。それでも、
純潔を散らされなかっただけましだと、涼子は自分に言い聞かせる。

 ――ここまで、だな。
 片方の口端を持ち上げ、澤田はニヤリと残忍な笑みを浮かべる。

 管理人の仮面が、音を立てて壊れていった。


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